事故を回避するために実践していること#滑走編
自然を相手にしているので不測の事態というのは起こりうるもので
想定外と言ってしまうのは、自分の知識不足だったり、経験不足からきているのが多分にあると私は考えている。
雪崩に関わり始めて早いもので10年の時が過ぎようとしている
自分が山を安全に滑りたいから雪崩を知りたくて始めた雪崩管理の業務、ここまで色々な事があったが雪崩管理を始めてから少なくとも入院するような事態には至っていないし、業務上で大きな事故を起こさずにここまでこれている。
これを運が良かったと一言で言い切ってしまうのは簡んだが
事故を回避するために実践してきたものも多くあるので何回かに分けて書いていけたらと思う
リスク
先に述べておきたいのはリスクに対する考え方、捉え方というのは人それぞれだと言うこと
それはその人の生まれや、価値観、人生観に裏付けられているものでもあると思うし、個々のスキルや能力、知識や経験によっても変わってくるものだと思う。
私はリスクを考え、捉え方としては
その日に起こりうる最悪の事態を一通りイメージする事から初めている
そうする事で自分の中の想定外を極力無くすという事を心がけている
最悪の事態をイメージしたらその起こりうる最悪の事態のどのリスクを受け入れるかという選択をするということ
行動を起こし続ける限りリスクをゼロにする事はできない
雪山で行動する限り、常にリスクに晒され続ける事になるわけで
どのリスクを自分の中で選択肢して受け入れるかというのはとても重要な事だと思う。
行動の選択をするときに 楽しさ(fun) 快楽 などの感情は持ち込まないようにしている
楽しさが先に来ると冷静な判断を欠いてしまうし、リスクを見出さなくなってしまうため排除するように心掛けている(そういった感情がないわけではない、あると意識して判断している)
山を滑る、偵察
雪崩の話ばかりをしているとただの雪崩オタクと捉えられてしまうかもしれないが、私は根っからのスキーヤーで滑るの大好きだ、自分が安全に滑るために雪崩を勉強していると言っても過言ではない
上で少し難しい話をしたが、滑るという事に欲が無いわけでもなく初滑走のラインはいくつか狙っている。(ここはかなり貪欲に)
前置きがだいぶ長くなってしまったが初滑走のラインや山を滑る時に自分が実践している事を書いていきたいと思う
まずは滑りたい斜面の写真を撮る事言うのが1番大事で
拡大しても沢の細部まで見れる画質で撮るように心掛けている。
当たり前のことだが、滑りたいラインが上から見通せる場所から写真を撮ると言うのが重要で、大事な核心部ほど見えない事が多いため、写真を撮る場所を探すのもまた一つの楽しみである。
偵察2
初滑走を狙う時は夏山にも偵察に入る
夏も同じ場所から写真が撮れるなら写真を残し、大きな岩や滝(これ重要)が無いか確認しておく、滝があるとクラックが入っている可能性(写真だけじゃ確認しきれない場合が多く、クラックにも雪がついて現地で実際に滑るまで認識出来ない場合も多い)
アクセスできる場合はドロップポイントから滑走のラインを見通しておくのも大事かもしれない、気分は高まるが大抵の場合雪がついてない場合ただの絶壁なので滑れる気はしないので意味はないかもしれない笑
現代において一番残念な点は断崖絶壁や険しいところしか初滑走のラインが残っていないというところ…(命がいくつあっても足りんわ)
イメージ
写真撮影を終えて、偵察を終えたら次に実践するのは
ひたすらイメージをするということ
厳冬期にどのラインを繋いで、頂きに立ち
どの様にシュプールを刻んで、無事に降りてくるのか
単純と思われるかもしれないが事故を回避したいのであれば
イメージするしかない
イメージ出来ないと言う事はその山行で起こりうるリスクを見出す事は出来ない、リスクを見出せないのであればそれは全て想定外の事となってしまう。
ぶっつけ本番で初滑走など狙いはしないし、厳冬期に稜線から滑走するような強者はみんなイメージをしているものだと思う。
イメージを膨らませて10回イメージして10回とも成功しないのであればチャレンジはしない
例えば1回でもイメージの中で失敗するのであれば、何で成功出来なかったのかを徹底的に考える
その当時の雪の状況が悪かったのか、道具がその時の体調が良くなかったのか、滑るラインが登るラインが悪かったのか?など
徹底的にイメージを繰り返して起こりうる不測の事態を考え潰して行く
限りある命をたった1回の滑りにぶつけに行っているわけではない、やれると確信をしたからこそやるのであって、イメージの時点で失敗する様であればそもそもチャレンジなどしないのである
写真は小蓮華から白馬岳左股を見つめる
今日のこのコンディションに自分のイメージは間違っていなかった?
山を見ながらアップデートをしているところ
普段山を滑るときは?
毎回こんな大掛かりな事をして山に入っているわけではなく
滑り慣れた場所ではどうしているのかを書いて滑走編は終わりにしたいと思う
事故を回避したいのであれば
- リーダーを決める
- 今日発生しうる雪崩を想定する(直近の天候などを考慮する)
- PTメンバーの技量(滑走スキル、雪崩対策装備の熟練度、体力)
- PTメンバーの個性の把握、その時の体調の把握(仕事が多忙で疲れているなど)
細かく書けば際限無く延々をかけてしまうのだが
このくらいの事をしっかりと決めていいのではないかと私は考える?
リーダーがいないので論外なので、どうするどうする言いながら山に入っていたPTがいるのであればまずはリーダーを決めましょう笑
不測の事態が起こった時にリーダーが居ないとただのパニック集団になってしまうので…
PTメンバーの特性をリーダーがちゃんと把握し
今日発生しうる雪崩が想定(イメージ)出来るのであればPTが取る行動は自ずと決まってくると思う
ウインドスラブが発生すると仮定したら
その判断がつく人を1番手に持ってくるのが1点(雪崩の判断がつくのであればリグループポイントも読めるだろうからそういう人を一番手に持ってくるのは重要である。リグループポイントの選定にミスして後発が誘発した雪崩に呑まれるケースがいくつか発生している)
もしくは雪崩の判断がつくけど、レスキュースキルが1番その人が高いのであれば一番最後に回すのも手かもしれない。
即席PTで個性も装備もスキルもわからないような人と山に入るのはリスクでしかない。
そのリスクを捉えていないのか、リスクを受け入れてその行動を取っているのかは定かではない
今日伝えたいのは
楽しい(fun)や快楽を優先せずに
リスクについて考え、捉えて
行動を起こす前に立ち止まってリスクを捉えるためにイメージしましょう!と言うこと
一時の楽しみや快楽のために考えないという事は本当に勿体無い
リスクを考えて、判断を下して、行動をした。
それによって山行が無事に終わったということの方が
楽しさや快楽はあるんじゃないかなと私は思います。
↓合わせて読んで頂けると雪山の行動において話が繋がってくると思います↓