雪崩の現場から、23-24シーズンを振り返って明確に感じた変化
シーズン中に使用したウェアをクリーニングしたことでシーズンも終了したなと実感しています。クリーニングの時にウェアからお金が出てくると嬉しくなってしまいますよね。
今年は八方に白馬乗鞍温泉スキー場に講習会にと飛び回り、なんだか忙しいシーズンだったなぁ〜と振り返ります。
1月末にスノープロファイルを取っているときにギックリ腰になった時はヤバいと思いましたが、鍼治療と酸素カプセルのコンボでなんとか2日後には動けるまでに回復することができました。
腰に電気が走ったのは初めての経験だったので
あまりの衝撃と痛みにこれが魔女の一撃か!と納得しました。
冬は毎週末講習会が入っており、2つの現場を任されているので穴を空けることができず。
怪我や病気で倒れることができないというのはかなりのプレッシャーなんですよね。
冬が終わるといつも気が抜けて腑抜けになるのも、今年は三月の降雪のおかげで末まで忙しく、腑抜けになる間もなく、農業のシーズンが始まっています。
変化を捉える
23-24シーズンを振り返って,
感じるのは”発生する雪崩が変化してしまった”ということ
今年は悲しいお知らせが本当に多かったなと思います。
知り合いのライダーやガイドさんの事故が相次いだシーズンとなりました。
現場で見ていて雪崩の変化というのは強く感じていて
今年の雪崩管理ではウインドスラブというのはほとんど発生していなかったように思う
シーズンを通して2日くらいしか発生していないように思う。(八方の雪崩管理において)
その代わりにスキー場内で発生していたのがストームスラブ
ストームスラブと言っても幅が広過ぎるのでもう少し絞っていうと
ウィークインターフェースに限りなく近いところでモイスト系の雪同士が結びついていて、その層が引っ張り合って発生するモイストスラブ(ソフトスラブ)が多かった。
*モイストスラブという分類の雪崩はないが、雪と同じで小分類をしていかないと区別がつかなくなってきているためあえてモイストスラブと書いている
かつてこんなにモイストスラブが発生することが八方であっただろうか?
気象が変化して、降る雪質が変化してきているのを感じる
メッシュ気候値、積雪の雪質分布から見る変化
メッシュ気候値というのをご存知だろうか?
メッシュ気候値とは、一定の格子(メッシュ)ごとに区分された地理領域における気象データの平均値を示すもので、気候の地域差や変動を詳細に把握するために使用され
10年ごとに更新され発表されている
↑メッシュ気候値から推定された積雪の雪質分布
-石坂雅昭, 本吉弘岐, 杉浦幸之助. (2023). メッシュ平年値が示す日本の積雪地域の雪質の変化 - 2000年と2020年の比較から. 日本雪氷学会-より引用
以下論文より要約を引用
1. はじめに
- 目的: 2000年と2020年のメッシュ平年値を比較し、雪質分布の変化を分析する。
- 背景: 10年ごとに更新されるメッシュ平年値を用いて、日本の積雪地域の雪質を評価。2. メッシュ平年値の比較
- 課題: 2000年と2020年のメッシュ平年値の比較における問題点を特定。
- 西南日本の除外(2010年以降)。
- 測地系の変更(日本測地系から世界測地系)。3. 2000年と2020年の雪質分布
- 大きな変化: 北海道道東の「しもざらめ雪地域」の減少。
- 傾向: 「湿り雪地域」の増加。4. 「湿り雪地域」の増加について
- 原因: 気温上昇(2000年の−3.1℃から2020年の−2.5℃)。
- 影響: より高緯度、内陸の高標高域へ「湿り雪地域」が広がる。5. 「しもざらめ雪地域」の減少について
- 原因: 気温の上昇と積雪の増加により温度勾配が小さくなる。
- データ: 北海道道東、福島、中部地方内陸部での積雪増加が確認される。6. 終わりに
- 注意点: 平年値の変化は過去10年の影響を引きずるため、現時点の傾向とは限らない。
- 課題: 高標高域での積雪推定における誤差の存在。この資料では、日本の積雪地域の雪質分布に関する過去20年間の変化を詳細に分析し、気温の上昇が雪質に及ぼす影響を示しています。
引用終わり
論文からこの20年で気温の上昇と雪質の変化を見ることができる
論文の全文を読みたい方は以下のURLより
雪崩前線
メッシュ気候値からは気温や雪質の変化が見えてきた。
では私は現場で何を見て考えているかというとこの2年は雪崩前線について考えている
*雪崩前線というのは造語
日本列島を宇宙から見たときに1日の中で特徴的な雪崩が発生した地点を
線で結んでいくと、日本列島に天気図の前線ようなものが見えてきて、その線上で雪崩が発生しているというのが何となくわかってきた。
ただ何故そうなるのか?まではわかっていなかったが
メッシュ気候値の雪質分布を見たことでこれだ!というものが分かってきた。
地域ごとにある程度決まった雪質というのがある
例えば沿岸部に近い妙高方面では里雪の湿った雪が降り
白馬では里雪と山雪がMIXして湿った雪も乾いた雪も降る
八ヶ岳まで足を伸ばせば内陸型の冷たく、乾いた雪が降る
雪質は地域によって違う
ここからは推測の域に入るが
普段降る雪質と違う雪質の雪が降った時に雪崩は発生している
それは気圧配置によるものが多く、近年は西高東低いわゆる冬型の気圧配置による降雪より
“低気圧型の降雪や南岸低気圧による降雪“が増えている
宇宙から日本を見てイメージして欲しい(メッシュ気候値の図を見れば分かりやすい)
・里雪型の湿り雪地域
・山雪型の乾き雪地域
・内陸型のしもざらめ雪地域
地域ごとにある程度決まった雪質があり
この決まった雪質と違う性質の雪質が混ざり合った時に雪崩が発生している
自分のイメージでは、メッシュ気候値の図に3タイプの雪質ごとに線が引かれていて
気圧配置により、その線が上下していることがイメージできるようになってきた
*例えば南岸低気圧の時は“里雪型の湿り雪“が南下してくるイメージ
それまでに降り積もっていた雪と性質が異なれば、雪崩が発生する
過去に書いたこちらのブログも参考にしてみてください
雪崩の現場から
最後に現場で見ていた変化について書き記し終わりにしたいと思う
22-23シーズンから極端に雪質が変わってきたなという事は感じていた。
それに起因する雪崩も変化してきているとは感じていた。
23-24シーズンに入って感じたのは
完全に雪質も出る雪崩も変化してしまったということ
現場で事故が相次いだのは急激に自然環境が変化してしまったが故に
自然の変化を捉えきれずに事故が相次いだと私は考えている
私個人で感じているのはメッシュ気候値の話云々ではなく
標高の低いところで起こっていた雪崩が標高を上げてきており
白馬で発生していた雪崩が北海道に移動したイメージがある。
知識や経験があるからこそ、変化を受け入れるのは難しい
プライドもバイアスもあるから
こういう時代には、知識や経験が少ない若者の台頭が望まれるだろう
経験則が役に立たない時代に突入してしまった。
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雪が無ければ成り立たないスポーツ、スキー
私の夢は3世代でスキー旅行をすることです。
雪以前に自然災害が極端化してきている現代で
私たちにできること、自然にやさしく生きる事はできないだろうか?
私が日々の暮らしで実践していることをブログに書きました。
ぜひ読んでみてください