雪崩シーズン前半戦を振り返って

雪崩シーズン前半戦を振り返って思うこと

時が進むのは早いもので年末年始のバタバタが終わったなぁと思っていたら1月も後半になっている

今年はどこからも雪が多いという声が聞こえてくる。
体感としても八方尾根スキー場から見下ろす村や里山の景色が真っ白で、あぁ〜冬なんだなぁと実感している。
近年は降雪が少なかったため村に雪は少なく、降っては溶けてを繰り返して、道路はアスファルトが露出して
通勤が楽だったように思う、それが今年は降雪量も回数も多いため、雪道運転が多く、通勤に時間は要するは
降雪があった日は至る所で事故が起きている。

良い点があるとすればアスファルトを走る時間が少ない分、新調したスタッドレスが長持ちするという事だろうか

予想に反して雪崩は少ない

シーズンに入った直後にどかっと雪が降り、その後に雨が続いたり、好天が続き、早い段階から
氷盤が形成されたことから、今シーズンは雪崩が多いんだろうなと予想したが結果は外れている

12月半ばまでは好天が続き、雪が降らなかった、このまま行けば11月にオープンしたスキー場も
一度クローズしなければならないのではないか?という程、シーズン初めにもたらされた恵みの雪は溶けて無くなっていた。

12月16日に始まった降雪はクローズ寸前まで追いやられていたスキー場にとっては本当に待望の降雪となった。

写真は20日にスキー場内の管理エリアで発生した地吹雪雪崩、黒菱全体で雪崩が発生したのはこれが初めてだ。
この状況が続くと思っていたが状況は違っていた(これ以来地吹雪雪崩は見ていない)

低温で風が強い

去年が何が違うのだろう?と気になったので気象観測機のデータを見比べてみることにした。


21-22シーズン 12月18日〜1月20日のデータ


20-21シーズン 12月18日〜1月20日のデータ
両データはlogiclworksさんが八方尾根スキー場に設置している気象観測のデータを引用

まず、なぜ12月18日からのデータかというと、今シーズン観測器が稼働していない期間があったため
期間を合わせるために12月18日からのデータとした。

2つのデータを見比べて分かることは
今年は風が強く、気温が低いという事

気温データはグラフを見比べれば、一目瞭然だが、風速データをCSVで抜き取って数値化してみると
21-22シーズンの総風速量(平均風速の合算)は[656m]
20-21シーズンの総風速量(平均風速の合算)は[555m]

という結果が出た、数値化すると一目瞭然で今シーズン、以下に風が強いかがわかる
体感としては去年は営業時間中に風でリフトが止まるという事はほぼほぼ無かったが
今年は営業時間中にリフトが止まるという事が頻繁にある。

風でもう一つ着目しておきたいのが
今シーズンは東風が多いということ、これは風向データには反映されていない(設置場所、構造上、東風は八方尾根では吹上の風になるので観測出来ていない事が多い)

現場にいるとよく分かるが、風が吹き上げる事がしょっちゅうで、雪の付き方が例年とは違う
八方尾根だけで言えば、東風は吹上の風となるため、吹上の風で運ばれた雪は西側に堆積、雪庇を発達させる
西高東低の北西風がぶつかる削剥面に雪が堆積して、雪崩の発生区となり得る場所の斜度が緩くなっている(あくまでも八方での話)

雪の付き方が例年とは違うため、風の通り道が変わっている気がする。

太陽を見る事が少ない

もう一点気になるのが、悪天が多く、日差しが届かないということ
気になったので、村のアメダスデータを引っ張り出してみた。

21-22シーズン12月1日〜1月20日 日射計 119.3
20-21シーズン12月1日〜1月20日 日射計 124,1

残念ながら八方の観測機には日射計が付いていないため、村の観測機のデータを見てみたが、あまり大差は見られなかったが
山際は雲に覆われて村は抜けているという事は日常茶飯事で参考にはならなかった。

現場で感じているのは今シーズンはクリスマスから1日を通して晴れた事は1日あったか無かった?じゃないかなと思う。
そう思うほど、雲に覆われている気がする、今日の昼過ぎに久しぶりに見た青空と太陽に心が躍った。

雪崩シーズン前半戦のまとめ

以上のデータから推測するに
低温で焼結が進まず、日が差さないので焼結が進まずスラブ化が図られない
日が差さないので雪の変態が進まず、低温も相まって滑り面が形成されない
低温が続き、氷盤が形成されないため、雪が効率良く運ばれない(砕かれない)
風が強すぎて、効率的に雪が砕かれていない

以上が自分が考える雪崩が少ない理由と言ったところだろうか
東風が多いことで例年と微妙に地形が変わって風の通り道が変わっているという事も大いに影響しているだろう。

恐れるは雪崩が出ていないという事実

これだけ雪崩が出ていないと気味が悪いなと思う。

こまめに雪崩が発生してくれた方がエネルギーが解放されるので規模は小さくなりがちだけど
これだけ雪崩が出ず、日射もないとなると恐ろしいものがある。

事実、若林先生も過去のデータを見ていると低温の年は大雪崩が発生していると仰られている。
1月末から2月半ばまでに大雪崩が出るだろうと予測されている。


個人的に気になっているのは1月8日に山全体で形成された表面霜
こんなに大きな表面霜は白馬周辺ではなかなか珍しいのではないか?

この周辺の層の成り行きが気になっているので明日は2m近くテストピットを掘ってみようと思う。

明日は久しぶりの晴れ予報
久しぶりの晴れ予報に心躍らせるか、行動が慎重になるかは人それぞれだと思う

来週からは久しぶりに気温も上昇する予報が出ている。

雪崩サイクルに入る時は一瞬

昨シーズンの話をしておくと
去年も今年と一緒で1月中に雪崩を見かける事はほぼ無かった。

1月27日に雨が降るまでは

そこ形相は一変して、2月はサイズ2の雪崩がスキー場内で多発して、崩沢でサイズ4の雪崩が発生した。
忘れてはいけないのは先日、1月5日発生した烏帽子岩周辺での煙型雪崩と昨シーズン崩沢で発生したサイズ4の雪崩は
HST内で発生しているということ

大雪崩とはそれ以上の深い位置で起きるのではないか

ハッキリ言って自分が雪崩管理を始めてからここまでの低温の年は無かったので予測の範疇を超えている所がある。

ここは先生の言葉に耳を傾けて、慎重に山を見続けたいと思います。

第2回『白馬雪崩の学び舎』のご案内

地域間で特有の雪崩というものがあり、地域間で雪崩を学ぶ場が必要ではないかと『白馬雪崩の学び舎』を立ち上げました。
第1回目は若林先生にもお話頂き、大好評で終えることができました。

第2回目はコロナ感染拡大の状況を鑑みてオンラインでの開催を行う事となりました。

詳細、参加申し込みは以下から

https://hakubamanabiya.peatix.com/

2回目の講師は2人

1人目は良い雪ふる所に必ず現れる板職人、ばんやクラフト松原さんに
「天気を読むコツ」をお伺いします。

2人目は私森山が
雪崩管理者が現場で使用する判断ツール
「状況認識(Situation awareness)」についてお話させて頂きます。

白馬地域の皆様のご参加をお待ちしております!

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