ダイヤモンドダスト新論
ダイヤモンドダスト新論
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NHKカメラは氷晶といわれるダイヤモンドダストの、風による衝突粉砕増殖をよく捉えている
電顕が明かすダイヤモンドダスト誕生
Motoi Kumai (熊井 基)博士は中谷宇吉郎先生が戦後北大助手として採用した電子顕微鏡専門家で、1951年に大気科学雑誌に掲載された論文は高い評価を受けた。
Electron-microscope study of snow-crystal nuclei
Motoi Kumai - Journal of Atmospheric Sciences, 1951 - journals.ametsoc.org
Print Publication: 01 Jun 1951 Page(s): 151–156
■氷晶の粒径は約0.05μが一番多い。これ未満の微小氷晶はすぐに消滅する。
■きれいな水蒸気が凝固した氷晶は、表面に超薄いオングストローム(長さの単位で、10の-10乗メートル)厚の液膜を帯びる。この付着力は異常に高く、また高温になれば厚みを増し、さらに付着力は高まる。キラキラはサラサラに直結するイメージがある。実態は真逆で、キラキラ・ベタベタ・潜熱ポッポッ。
■ きれいな水蒸気由来の氷晶と違って、他のバイオエアロゾル起源の浮遊物質は粉砕されても付着性は増すものの自己増殖はない。ヨウ化銀、黄砂、火山灰・・沢山播けば沢山降るが、大気汚染物質が増えるだけのこと。気象学定説は、巻雲の中で爆発的に氷晶が増殖する姿、粒径が約0.05μに落ち着く理由を説明できない。
川霧がダイヤモンドダストをつくる
―小林禎作博士による熊井応援歌―
北大低温研の助教授だった小林先生は、中谷大先生とは異なった系統の雲物理学者であった。温度湿度で結晶の形状中谷ダイアグラムの欠陥を修正した小林ダイアグラムの業績で知られる。
中谷先生は、過冷却水滴による凍結一辺倒で、ニセコ山頂に零戦を上げての大軍事研究を実施した。山形蔵王の樹氷モンスターの成因は、いまなお、日本海からの過冷却水滴が野を越え山を越え、アオモリトドマツに衝突して過冷却が破れて凍結する、という定説しかない。
- 1970年出版の愛読書「雪の結晶-自然の芸術をさぐる-」(講談社ブルーバクス)には、中谷批判も秘められている。火山国では川の開いた水面が厳冬にもあり、絶えず川霧が発生している。強力な加湿器だ。これが容易にダイヤモンドダストを産む、と指摘した(p.192)。これは中谷大先生への叛旗だ。私の勝手な通訳では、蔵王の樹氷モンスターも、ニセコ山頂の着氷も、足下の川霧がもたらす。
気温層の横転
上空ほど寒いのが普通である。最近、地形が降水にもたらす効果を、山ほどの英語原典(レビューを中心)にあたって勉強した。いま、若林オリジナル「気温層の横転(side toppling)」を世に問う。
火山国日本では内陸にも温泉が多い。川霧が立ち昇り、巻雲内部に似た状況が付近のスキー場で生まれる。
氷晶エリアでは、水蒸気の気塊が横断的に連結し、地形性上昇気流によって断熱膨張し、氷晶のできる温度にまで冷やされる。しかし氷晶が出来るときに、余った潜熱エネルギーが氷晶をとりまく空気を温める。
同時に、触れるモノすべて(樹枝・まつげ・衣服・測器・雪面等々)に氷晶が凍着する。
樹氷が咲く。空気は生温かい。ラッセルは重い。
ベタベタ、ポッポッのダイヤモンドダスト現象に例外はない。
ダイヤモンドダストストームの現場
相棒の森山建吾は白馬のスキー場現場で、この種の貴重な観測データを集積している。ダイヤモンドダストの降雪か地吹雪かは、彼の分析に待ちたい。
私はさしあたり「ダイヤモンドダストストーム(DDS)」としてデータを集積したい。
海洋・里山→豪雪山岳→開水面+氷晶雪崩
富山→立山連峰→白馬スキーエリア
糸魚川→妙高・苗場→谷川岳スキーエリア
津軽海峡→狩場山→ニセコスキーエリア
これらのDDSについては、おいおい紹介する。