槍ヶ岳山荘小屋開け作業#2

雪の少なさも相まって外の除雪作業はほぼほぼ終わりを迎えている。


例年であれば5月末まで細かい除雪は続くので、雪の少なさに加え、雪の柔らかさがどれだけ異常か…

通常であれば、積雪の下層に近づくにつれて厚い氷板が現れ、投雪機では太刀打ちできないので
ツルハシやチェーンソーを使いながら少しずつ雪を掘り下げていくことになる。
それが今年は投雪機で全ての雪を飛ばす事が出来てしまうため、氷板はどこに行った?となってしまうのである。

スノープロファイル

今年の異常な雪の少なさと積雪構造をデータとして記録しておくために
スノープロファイルを取ることにした。

残念ながらスノープロファイルのキット、雪温計は持って上がって来ていなかったので
経験による目検討なので、確実性がないのは残念であるが硬度、粒径、含水率は見言い出す事が出来たと思う

まずフルピットでデータを取っているが、稜線の総積雪は218cmではない
平均的なデータが取れそうな場所で尚且つ、明確に層が分かれている場所を探してプロファイルを取った場所の積雪が218cmだという事はご理解頂きたい

氷板が無いと思っていたら1cmにも満たない(3mm程の厚さデータ上1cmにしている)
氷板を積雪層の中間に見出す事ができた(ちゃんとデータ取るって大切ですね、薄過ぎて気が付かなかったです…)
表面の雪は21日夜に降雪があり、夜中に雨へと変わったものが風に叩かれ、凍り付いたもの
雨量はさほどでは無かったのと、降雪スタートだったため、新雪が水を含み留めてくれた事はグッドニュースだと思う

上層で雨を留めてくれるとしたら新雪層と2m付近にあるこしまり雪の層くらいで
うっすい氷板がどの程度水を受け流してくれるかは定かではない…

今後大雨が降った時に下層の霜ざらめの層に水が到達した時の事はあまり考えたくはない
3月14日の出来事が稜線付近でも起きない事を祈るのみである。

 

写真では分かりやすいように硬い層の上下を掘ってレイヤーを分けて見やすくしている、最下層部はざらめ雪と霜ざらめ雪の境界を示している。

雪が降らないということ

小屋開けの事だけを考えれば、雪が少ないというのは本当に楽なことで、通常であれば一ヶ月近くかかる雪掘りもわずか5日で終わりが見えて来ている。

雪が少ないことで問題になってくるのは小屋の水問題
水源が無い稜線の小屋としては雪が少ないというのは死活問題で、この時期は雪をひたすら溶かして飲料水を確保しているが、それもままならない、懸念されるのは雪解け水を水源としている小屋でも秋に水源が枯れてしまはないかということ

雪が少ないことでいい面もあれば悪い面もある、相対的に考えた時にはなんとも言えない状況だが
水の事を考えると雪が多いに越したことはないだろう…

雨には最大限の警戒を

今回スノープロファイルを取ったのは槍ヶ岳の稜線上で、情報としてはとても限定的であると考えていて
山域による積雪量の違いにより、積雪内の構造は違ってくると思う。

一つ言えるのは槍周辺では雨予報がある時には行動を自粛するべきであると私は考える
脆い積雪層に雨が浸透すれば全層雪崩が発生する可能性は多いにあるのではないかと思う

雨量にもよるが雨が降っている最中、雨が止んでから日射が射した時というのは全層雪崩の発生する危険性は高まる
事実、昨日は降雨であったが雨量が少なかったことと、新雪が載った上に雨が降ったので下の層までの影響は無く
晴れ間が広がった昼休みには最高のフィルムクラストを滑る事が出来た。
いずれにしても今の状況が改善されるには
大きな温度変化や大雨がなく、雪が溶けていくのを待つか
大雨が降るのを期待するしかない(GWに入る前にどうかお願いしますよ)

アラスカの雪崩のプロフェッショナルのビルさんが昔こんな事を言っていた。
『雨というのはゲームで言うリセットボタンを押すようなものなんだよ、複雑な積雪構造をリセットしてくれるから雨が降るのはいい事だ』と

今まではハイシーズンに雨が降るのはパウダーが死ぬから本当に嫌だなぁと思っていたが
ハイシーズン中(雪温がまだ低い時に)に降る雨というのは積雪を安定させるためにはとても重要なんだなと痛感するシーズンになっている。

その当時には理解できなかった、ビルさんの言葉がようやっと理解できるようになった。

今シーズンの傾向を知りたい方はこの辺りから読み戻って見てください↓
https://forestmountain.blog/640/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA