環境への取り組み#1

スキーを生業にしている以上は向き合わないとならないのが環境問題
今まで環境問題についてはあまり触れることは無かった

何故ならまぁめんどくさいし、生業にしているなら取り組んで当たり前だろ?と考えていたし、わざわざ自分が取り組んでいることを書くまでもないかなと思っていた。

では何故自分が取り組んでいることを書こうかと思ったかと言うと

今日本が置かれている終末的な壊滅的な状況に黙って、いそいそと取り組んでいるのもどうかな?と思ったからだ

今日書くことは一見雪崩の世界とは関係ない話かもしれないが、自然を捉えるという点では同じだし、雪が降らなければ雪崩は出ないし、水循環を考えればこそ考え、取り組まなければならない問題であろう

耳の痛い話であると思うが最後まで読み進めて欲しいと思う

はじめに世界が温暖化に向かっているのか、寒冷化に向かっているのかは私にはわからない。
ただ一つ言えるのは自然環境が劇的に変化してしまったというのは痛感している。

環境のことを考えて始めた農業

7年くらい前になるだろうか?
ふとスキーを生業にしているけど、雪が降らなくなったらどうすれば良いのだろうか?
環境への取り組みとして私にできることは何かないだろうか?

と考え、色々と調べてみたことがあった、その時に知ったのは

“農業というのは環境に大きな負担“をかけているという事を知った。

それまでスーパーで売っている野菜やお米、食品が環境に負担をかけている事など知りもしなかったし、考えもしなかった。

自分たちが食べるものくらいは自然環境になるべく負荷をかけずに自分の手で作ろうとお米や野菜を作る事を決意した。

農業が抱える環境的負担

日本の水稲の歴史は諸説あるが
古くは縄文時代後期(3000-4000年前)には行われていたと言われています。

現代の農法には多種多様な農法があり
私が取り入れて取り組んでる農法は自然栽培というもので
農薬や化学肥料を使用しない農法になります。

ざっくりと農法を書き出しておくと(全てではない、代表的なものを)
・慣行栽培(今となっては一般的な農法、化学肥料、農薬を使用する)
・有機農業,organic(指定された農薬は使用可能、堆肥などを土づくりに使用する)
・自然栽培(上記の通り、農薬や化学肥料を使用しない自然由来のもので土づくりを行う)
・自然農法(農薬や化学肥料を使用せず、極力自然に近い形で栽培する)

スーパーや直売所で売られている野菜や食料加工品は基本的に慣行栽培で育てられたものが売られている。有機やorganic(指定された農薬は使用可能)*栽培中に農薬や化学肥料不使用などの記載が無ければ、基本的に農薬や化学肥料を使用して育てられた野菜である

個人的には環境的負担をより強く強いている慣行栽培は問題だと思っている。
有機や自然栽培、自然農法が自然に対して環境的負担がないかと言うとそれはないと考えている。ゼロではないが、環境的負担は少なく、後述するが自然環境を再生している実感が私にはある

慣行栽培の問題点

・マイクロプラスチック問題
・水質汚染
・生態系への影響

水稲を例に書いていこうと思う

マイクロプラスチック問題

お米づくりでマイクロプラスチックが排出されているなんて考えもしないだろう
どこから出ているのか?

それは一発肥料と呼ばれる化学肥料を包む外皮にある

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210518/k10013037271000.html

↑はNHKで取り上げられたマイクロプラスチック問題の記事

ことし2月の調査で最も多かったというプラスチックの小さな粒を見せてくれた。大きさは2ミリから4ミリくらい。まるでカエルの卵のようだが、透明のものや明るい色のものなどさまざまだ。
いったい何だろう?
「これ、『稲作で使われる肥料の空き殻』なんですよ」
記事より引用

近年では海のみならず、山や雲の中からもマイクロプラスチックが検出されている

https://www.gizmodo.jp/2023/10/mt-fuji-micro-plastic-waseda.html
これに関しては肥料で使われているプラスチックだけが原因だとは思わないが、知ることは大切だろう。農家ですら化学肥料にプラスチックが使われているのなんて知らないのだから

水質汚染

水質汚染を考えるのであればマイクロプラスチックが大きな問題であろう
マイクロプラスチックは既に水循環のサイクルの中に入り込んでいるのだから
雪質が変化しているのも、発生する雪崩が変化してきているのもこういった物質が雪に入り込んできているのも大きな影響を与えているのではないかと私は考えている(マイクロプラスチックに限らず)

恐ろしくて現代の“雪なんか食べれないわ“
というより、パウダーの日に口の中に雪が入ると喉痛くなりませんか?

水質汚染はそれだけに限らず、農薬や化学肥料を使用することでも引き起こされている

水質汚染と農業の深刻な関係

私たちの生命線である水が、今、黙々と進む危機に瀕しています。化学肥料と農業の発展が、不可逆的な水質汚染を引き起

こちら記事がわかりやすく書かれていたので引用させて貰う

化学肥料が引き起こす主な環境問題

化学肥料による水質汚染は、地表水や地下水だけでなく、広範にわたる環境問題を引き起こすことがあります。窒素やリンが過剰になると、水中で藻類の異常な増殖が起こり、水質の悪化が進む「富栄養化」と呼ばれる現象が発生します。富栄養化は水生生物の死滅を引き起こし、生態系のバランスを損なう原因となります。さらに、これによって発生する有害藻類が生成する毒素は、水中生物に影響を及ぼすだけでなく、人間がその水を利用する場合にも健康被害を及ぼす可能性があります。このような問題は、地域や国を越えた環境問題として認識され、国際的な対策が必要とされています。

化学肥料を多量に用いることで発生する硝酸塩窒素による事故も起こっている

過去には、硝酸塩を体内に取り入れたための死亡事故がおきております。裏ごししたホウレン草を離乳食として与えたところ、30分後に278人の赤ん坊が中毒となり、39名が死亡した『ブルーベイビー事件 (アメリカ.1956年) 』は全世界に衝撃を与えました。

水が豊富な長野ではあまり問題になってはいないが
群馬県の都市部ではこのようなデータも観測されている

(3) 調査結果
調査を実施した 151 本の井戸のうち、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が 11 本の井戸で、鉛・砒素が各 1 本
の井戸で環境基準を超過しました。

水質汚染の問題は化学肥料だけに留まらず
除草剤によるものも大きい、主な主成分はグリホサート

発売されている商品名は「ラウンドアップ」
ホームセンターやテレビのCMで見たことくらいはあるだろう

世界とは逆の流れを行く日本

緩和された日本の残留基準値
WHO(世界保健機関)の専門家機関がグリホサートを発がん物質としたことをきっかけに世界では使用禁止や規制強化に踏み切る動きが広がっています。しかし、日本では2017年12月に規制を緩和。例えば私たちが日常的に口にするパンやめん類の原料である小麦粉も残留基準値が緩められました。日本は世界の農薬規制の流れと逆行しています。

緩和される日本のグリホサート残留基準値

除草剤について詳しく知りたければ「グリホサート危険性」や「ラウンドアップ裁判」で検索を掛ければいい
その問題や危険性については世界中のニュースや論文がいくらでもヒットする

オススメの本は
2019年に角川新書から発売された「売り渡される食の安全」山田正彦(著)を読んでもらいたい
なぜ日本がこのような現状にあるのかが見えてくる

生態系への影響

化学肥料の多用による水質の悪化 富栄養価 により水質汚染から起こる水生生物の死滅も大問題だが
ネオニコチノイド農薬による生態系の直接的な影響も無視することはできない

最近、ネオニコチノイド系殺虫剤という言葉を新聞等でも目にするようになりました。ネオニコチノイド系殺虫剤とは、平成5年頃から使用されている殺虫剤の総称です。現在、7つの化学物質が農薬取締法に基づいてネオニコチノイド系殺虫剤として登録されています。昆虫の神経伝達を阻害することで殺虫活性を発現し、適用できる害虫の種類が広いという特徴があります。また、脊椎動物への急性毒性が低く、環境中で分解されにくく残効性があり、水溶性で植物体への浸透移行性が高いことなどから、様々な植物に広く使用され、農作物の生産性向上等に役立ってきました。しかしながら、近年、昆虫などの無脊椎動物だけでなく脊椎動物に対する免疫機能や生殖機能の低下などの慢性毒性が報告されるようになり、直接的及び間接的な生態系への影響が懸念されるようになってきました。ミツバチ減少の原因物質としても疑われており、使用を規制する国もでてきました。

ネオニコチノイド系殺虫剤は、水溶性であることから水環境へ移行することが考えられ、事実、河川水等からの検出事例が報告されるなど、環境汚染物質としての関心が高まってきています。しかしながら、本殺虫剤の環境中濃度の測定例はまだ少なく、汚染実態は明らかとなっていませんでした。

↑は埼玉県環境科学国際センターの記事

ネオニコチノイドの影響は害虫だけには留まらず、益虫
とりわけ”ミツバチ”たちへの影響が大きいと言われている

ミツバチ?笑
と思うかもしれないが彼らは受粉を行なっており
一説には世界の食糧の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介していると言われている

ここではネオニコには触れられていないが、今自然界で起きていること、今後起こりうることがわかりやすく解説されている

ちなみヨーロッパなどでは生態系への影響を考えて2000年初頭からネオニコチノイド系農薬の使用を規制する動きが始まっている
日本ではありがたいことに2015年〜17年にかけて基準緩和が行われている

ではどのような場面でネオニコチノイド系の農薬が使われているかと言うと
水稲では出穂といってお米の穂が出てきたタイミングでカメムシが穂についてお米を吸いにくる
お米が吸われることで吸われた部分に黒点が入りお米の等級が下がってしまう
等級が下がる=売値が下がるので農家には死活問題

そこでカメムシをやっつけるためにネオニコチノイド系の農薬を散布して秋には田んぼで一斉防除が行われる
現代ではドローンの技術が発達したため防除はラジコンヘリによって行われる

防除の様子を見てみたい人は「カメムシ ドローン防除」と検索をかけてみればいい

レイチェル カーソンの「沈黙の春」という本を読んだことはあるだろうか?
1974年に発刊された本で
農薬の過度な使用により、自然環境と生態系に深刻なダメージを与えることで
”鳥も鳴かぬほど静かな春が訪れる” という暗い未来を象徴している。

ドローンで農薬が一斉散布された後の田んぼを見たことがあるだろうか?
”生物の営み”を感じない田んぼに「沈黙の春」を垣間見た…

まとめ

農業のことはあまり書きたくはなかった。
なぜなら生活に直結していることだし、雪崩業界とは比べ物にならないくらい業界、パイが大きすぎるから
こういうことを書くと突っかかってくるアホが居てめんどくさいから

彼らの言い分は大概
基準値以内、国が認めている、多くの人の食を支えるため

ごもっともだと思う

自分が改めて言いたいのは
「自分達が食べるものくらいで自分で作ろうよ」ということ

大規模農業になればなるほど、効率化やコスト面のことが先に上がってくる
担い手がいない以上、機械化、効率化が優先されるのは当然だろう

じゃぁなぜ上に書いたことが行われているかというと
消費者自身である”あなたや私がそれを望んでいるからだ”

綺麗な野菜の方がいいでしょ?
黒点のない綺麗なお米を食べたいでしょ?

農家を追い込んでいるのは私たち自身だよ

現場を理解して知ることはとても大切だ。

買い物は投票だ

私の好きな言葉の一つに「買い物は投票だ」という言葉がある

あなたは野菜やお米を買うときにどこから購入していますか?

前述した通り、スーパーで売られている野菜、お米、食料品は表記がない限りは基本的に慣行栽培で育てられたものになる

それを購入するというのはどういうことかと言うと

計らずしもあなたは
・マイクロプラスチック問題
・水質汚染
・生態系への影響
を及ぼすことへ加担している、もしくは支援しているということになる

”買い物は投票”というのはそういうことだ。
物を買うということにはそういう側面があるという事はしっかりと認識しておくべきだ
自分にはそういう意思や意図が無かったとしても

そもそも日本では多くの化学肥料を自給することは出来ずに海外からの輸入に頼っている
だからこそウクライナの戦争に煽りを受けて肥料が高騰して、野菜の価格が上がっている
スーパーで野菜を買っているのだとしたらあなたの食は海外の人に握られている(国際情勢による左右される)といっても過言ではない

お米や野菜を作ろう

ではどうすればいいのか?
大規模農業や国際情勢に食を委ねるのではなく
自分自身で自分の家族が食べる分の食を作ればいい
農地は腐るほど余っているのだから…

借りたい農地があるなら散歩しまくって近くを通った農家に話しかけて
この畑借りたいんですけど、どうしたらいいですか?と聞いてみればいい
私はそうやって畑を増やしてきた。
畑が手に入らないならプランター栽培だって十分だ。
夏野菜ならいくらでも収穫することができる

環境は再生することができる

自然栽培を行うことで見えてきたのは
環境は再生することができると言うこと

年々、畑や田んぼには生物が豊富になってきていることを実感している
昨年から田んぼにはアカハライモリが棲みつくようになり、出穂の時期にはミツバチたちが
稲の蜜を吸いに何百何千のハチたちが遊びにきている光景を見たときには本当に感動した。

同時期に防除に入る田んぼにはハチたちは寄りつくことすら出来ないのだか

小さく生きることでなるべく環境に負担をかけずに自然に優しく生きていきたいよね
「Small is Beautiful」と言ったのはシューマッハ
小さきものに目を向けて、小さきものたちの声を聞き取れるようになりたいし、そう在りたいなと思う

すべては循環している

環境問題のことは多岐にわたるため書ききることができない
今回は自分の意見というよりはニュースには出てこないが
世間で言われてることや書かれていることをベースに取り上げてみた。

こうやって書き出してみると問題は一つではなく、一つの問題の先には幾重にも枝分かれをして
問題が潜んでいることが見えてくる

だからこそ、まずは知ることが大切だと思うし
どのように捉えて歩んでいくのかを決めていくのはとても重要な事だと思う
一つだけ言えるのはテレビの情報は正しいとは限らないということ
この辺は雪崩のことで取材を受けることがあるのでよ〜くよく認識している
台本があって、その筋書き通りの情報の発信しかしていないんだろうなと

環境問題に限らず、すべてのことは循環している
「温暖化」と聞くとどこか遠くの国で起こっていて、自分にはどこか無関係で
技術革新が起これば解決するだろうとか、物事を解決してくれるヒーロー的な人が現れるだろうと
どこか期待してしまいがちだが、そんなものは現れないし、起こりはしないだろう

大切なのは手間暇かけて地道に取り組むことではないだろうか
そのために、まずは知ることから始めるべきだと私は思う

すべては循環しているので、問題を先延ばししたとていずれ自分たちに還ってくるし
こなかったとしても次の世代に皺寄せがいくだけだろう。

水循環のサイクルを思い浮かべてほしい
海から雲ができ、山に雪や雨を降らせて、川に流れ、また海へと還っていく

その水循環の中に私たちの暮らしがある
差し詰、現代の暮らしはプラスチックを大量消費して、それを自然界に垂れ流し、農薬や化学肥料を大量に利用して
海へと流し込み、水循環の流れによって自分たちが垂れ流し、流したものをまた口にしている

自然界に生きるすべての生物からしても本当に良い迷惑だろう
母乳からグリホサートやマイクロプラスチックが検出されている現代

「私たちはプラスチックを食べるために生きているのだろうか?」

環境問題に取り組む理由

なぜ環境問題に取り組むのか?と問われたら理由は2つ

1つ目は私の夢でもある、3世代でスキーをするということ
そのために自分ができる範囲のことはやっていこうと考えている

2つ目は後世のために
2人の娘がいる私にとって、自然環境の変化というのはとても深刻な問題だ。

環境問題を意識して考えるようになったのはパタゴニアフィルムズのダムネーションという映画を見てから
ダムというのはクリーンなものだと思っていたし、そう教わってきた。
でも映画を見た後にダムはクリーンではないということを知り、大きなショックを受けた

ダムネーション上映の帰り道、上映会に誘ってくれた大人の方に
「何であなた達が好き勝手やってきたツケを私たちが取らなきゃいけないんだ」

と吐き捨てた。

私は娘たちに「何でこんな世の中にしたんだ、産み落としたんだ」と言われることがとても怖い
それが私が環境のことを考え、取り組む理由

最後に

リサイクルや分別やゴミ拾い、エコバックを持つことが環境に優しいことだと思ってる(刷り込まれてる)人があまりにも多いなと思う
環境のことを考えるのは人それぞれだし、アクションを起こすも起こさないも人それぞれだと思う

最後に一つだけ言っておきたいのは
スキーという天然資源の雪がないと楽しむことができないスポーツ
自然により近い場所で行われているスポーツ、雪不足だとか温暖化だとか暖冬の影響を現場で見て感じている私たち

聞こえてくるのは、ホームセンターで買ってきたやっすい炭(どこぞの国かも分からないマングローブを切り開いて適当に作られた炭)で牛肉を焼きながら「今年は大雪降らないかな〜」

そんな光景を目の当たりにすると「雪なんか降らなくていいわ」と思う

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