山岳林:風雪を生き抜く
雲霧林/凍裂雪氷学会発表
白馬連峰の山すそ、朝は川霧に覆われています。
その川霧は陽が昇るにつれて、山を登り、標高1000m以上を雲で覆います。
標高約1500mの「栂の森」は、ブナとオオシラビソの森林ですが、幹の肌はいつも濡れて、
コケの仲間である「ホネキノリ」というとろろ昆布に似た緑のヒゲが覆います。
北欧ではサンタクロースの髭にこれを用いているそうです。
冬、雪の多い時期は積雪が4m~6mになります。降ったばかりの雪がだんだん締まって硬くなります。
そのとき雪はホネキノリをむしりとってしまいます。
だから幹の肌が露出した部分が積雪の部分で、その場所の雪の深さ(最深積雪・最高積雪深)が分かります。
栂の森よりも高いところでは、樹木の幹のほとんどが「縦に大きく割れる凍裂」を持っています。
オオシラビソ(アオモリトドマツともいう)が凍裂によって立ち腐れを起こし、自らの子孫に肥料として捧げる。
若林・佐野の新学説により、日本の亜高山帯森林がモミ類に独占され繁栄している理由が解き明かされました。
針葉樹は弱いから鉛直 広葉樹は強いからオーバーハング
針葉樹は細いストローのような縦の管を集めた材で出来ています。
中空の部材で出来た針葉樹は、柔らかく加工しやすい。それに水を吸い上げやすく、冬の寒さにも葉をつけたままで成長できます。
カラマツは葉を落としてしまいますが。
ブナ、トチノキ、ダケカンバなど広葉樹の部材は水を勢いよく吸い上げられるように、太いパイプでできており、針葉樹よりも成長が効率的です。
フォークツリー
植物には身を削ってホルモンを作り、重力に抵抗して先端を上へ伸ばす。またアスパラガスのように、光の多い方向(横や下からであっても)に成長の向きを変えます。これを『屈性』と呼び、ダーウィン親子が1880年に「植物の運動力」という本を発表しました。
いま若林・戸田・佐野のグループで、風雪屈性の英語論文を書く準備をし、140年のブランクを打ち破りたいと燃えています。
信州大学農学部修士論文、平成13年度戸田直人、の表を紹介しましょう。
フォークといっても、小枝は風上方向と風下方向の対峙する方向にのみ多く発生し、中央の立枝には出ません。風上の枝揺れは、風下への一方的な揺れを弱める:両立枝の付け根では揺れが弱められ(相殺)、強風地での生存に決定的な役割をはたします。
この原理の発見は、私がつくばの林野庁林業試験場で森林災害対策の研究をしたころ(1982年)の成果です。
-----------------------『白馬雪崩の学び舎』からイベントのご案内-----------------------
8月4日に若林先生と行く栂の森散策ツアーを企画しました。
ブログの上記のお話や凍裂についてのお話を栂池高原、栂の森にて木を見ながらお話をして頂きます。
お申し込み詳細は以下から↓
https://manabiya06.peatix.com/
『白馬雪崩の学び舎』初の現地での講習会、先生のお話を現地で聞けるのは貴重な機会です。
皆様のご参加お待ちしております。
先日は貴重な講義を聞けて本当に有意義な一日でした。地面が這うように動くこと、折れてフォークツリーになるまでにタメがあること、何よりも雪がそんなにも深く沢に堆積していること、ものすごく大きな雪崩が起きることなどすべて想像の域を超えていました。
また、子どもたちも自然に溶け込んで話を聞いていて、描いた絵がフォークツリーや地面の中の根っこだったりして、子どもでもちゃんと自然を感じて理解しているんだと感心しました。やはり子どもの頃から自然に親しんで少しずつでもこういう話を聞くという機会があった方が頭でっかちではないナチュラルな大人に成長するのではないかと深く感じました。
最後になりましたが、案内を頂いた時から当日まで、本当に至れり尽くせりとお世話になりました。ありがとうございました。白馬の山も人も本当に素敵でした。
『白馬雪崩の学び舎』の現地講習会「栂の森散策ツアー(8/4)」に参加しました。
栂の森で見たオオシラビソの子孫を繁栄させるための自己犠牲としての「凍裂」,雪崩記録計としての「フォークツリー」,栂池自然園に残る「大雪崩の痕跡」など,びっくりするような森の生存戦略や自然界のしくみを楽しく,わかりやすく教えていただきました。
「白馬は雪崩の国」を実感!
一緒に参加した可愛らしいご姉妹や,高校の理科の先生との会話も楽しいひと時でした。貴重な体験の場を作って下さった「雪崩屋」と「雪崩探究者」にこころより感謝申し上げます。