FWTの雪崩管理から学んだこと#1

自分の雪崩管理という概念を変えさせられた出来事の一つに印象深く刻み込まれているのが
FWT HAKUBA(フリーライドワールドツアー)での雪崩管理が挙げられる

なぜFWTの雪崩管理に入りたいと思ったかは下のブログを是非読んでいただきたい
FWT HAKUBA に賭けた想い

雪崩を予測する

どうやって雪崩を予測しているかを聞かれたら
を見ていると答える

風向風速を見ることでどの方位にどのぐらいの雪が再配分されているか見ている(考えている)
弱すぎる風は雪崩を作れないし、強すぎる風は雪崩を生めない、丁度いい風速というものがある

下の図はNPO法人ACTが冬になると設置している気象観測機のデータ


北アルプス北部地域雪崩に関する情報 
↑ ACTのHPから八方と白馬乗鞍岳に設置されている気象観測機のデータを見る事ができる
山に入られる方は参考にしてみてください

ACTの代表曰く「気象観測機は目になる」
山に入れない時でも観測機のデータが入ってくれば山の状況を想像する事が出来る

FWTの雪崩管理

雪崩管理に入ったのは2020/01/16、前日の15日から八方池山荘に泊まり込み
早朝の雪崩管理に備える事となった。

この夜は猛烈に風が吹き荒れて、ビュービューと風の音とガタガタと小屋が揺れる音が一晩中鳴り響いていた。

この光景を見て、明日の雪崩管理では雪崩が発生しないだろうなと思った(風が強すぎるので)

翌日、夜中に吹き荒れた風は嘘のように空気は静まり返っていた。
村の明かりが残り、朝日が顔を出し始める頃に山荘を出発した。

月明かりがまだ見える中、アルミパイプで作られた重たいスタートゲートをザックに括り付けて進む一行(それ今運ばなきゃいけないのかな?こっちは爆薬背負ってて重たいし、緊張してるから早く現場に入りたいんですけどと思いながら登っていた笑)

雪崩でないだろうな

朝起きた時点でACTさんの観測機を確認すると、昨夜は風速20m overの風が吹いており
(上の観測機の写真データが01/16の風速データ、実線が16日0時)

雪面は風に叩かれてクラストしていた、観測機のデータからもこりゃ雪崩でないだろうなと考えた。(観測機のデータからの予測にバイアスが入っている)

大会で使用する予定の斜面を尾根を分けて南北に一つずつ想定していたので
持ってきた爆薬の数量からどこに仕掛けるか現場を見て計画を経てていざ管理へと入った。
*管理の話は明確に表現出来ない部分もあるためわざとボカシて書きます。

結果なし

1発目の爆薬を設置して点火
初めての山での管理という事もあり、余裕を持たせるために
3分で炸裂するように導火線を調整した。

けたたましい爆発音が谷に鳴り響く

1発目は爆薬の衝撃で雪面に穴が空いただけで結果は無かった
これが3発続き、予想通りだなと思った。

ここで一度南側(崩沢)に管理斜面を移した。

崩沢の方がより激しくクラストしており数発爆薬を使用したが、結果は出なかった
1発使用するごとに証拠を集め、予測が自分の中で確信へと変わっていった。
今日は風が強すぎたから雪崩は出ないだろうと

あれ?

南側の管理を切り上げて再度北側(ミックス)へと戻り管理を再開した。
ここからは標高を下げながら雪崩が出そうな沢を一つずつ潰していく作戦だ

北側での爆薬使用4発目で変化が現れた、サイズ2の面発生(ウインドスラブ)雪崩が発生して
面食らった(面発生だけに…)出ないと思っていた雪崩が出たので正直焦った。

写真は4発目が炸裂した瞬間、爆煙の横で雪が崩れ落ちていく

この光景を目の当たりにした時に私の頭の中のCPUが火を吹いた。

出ないと思っていた雪崩が発生して、なぜ?が頭の中を駆け巡る
自分の予測の中では強すぎる風は雪崩を生まないはず…
なぜ予測が外れた…なぜ…?

頭は軽いパニックだが管理は続く、雪崩が出ると頭を切り替えて
5発目、小さな面発生が出た。

やはりここから立て続けに出るのか?

結果なしから自然発生

標高を下げながら爆薬を使用していく
6発目は結果なし
ここで更にわからなくなる
7〜8発目も結果なし
全ての爆薬を使用してFWTの雪崩管理は終わった…
何故が頭の中に広がる

管理を終えて、4発目に発生した雪崩のデブリを確認したいなと更に標高を下げて行ったら愕然とした。
自然発生でサイズ2の面発生が発生していたのだ…(登っている最中は暗くて気付かなかった)

ここでまた何故が頭の中に広がる
風が強すぎて雪崩が発生しないと予測したのに、面発生が出たどころか
自然発生で雪崩が出ている…なぜ?

ミックスの管理ポイント、結果
赤点が爆薬を使用したポイント
青が爆薬で面発生の出た場所
緑が自然発生が出た場所

ミックスの頭にはACTの観測機が設置されている、管理に入りたい斜面のトップに観測機があるという好条件!これもまたバイアスに囚われた一つの要因だろう

何故を検証する

管理が終えてからも頭の中は煮え切らなかった。
出ないと思っていた雪崩が出た、何故だろう?
(予測を外した事を憂いているわけではない、予測した通りにならなかった事を考えている(修正しようとしている)

その日から考え始めるが答えを見出せなかった。
これは現場に入り、破断面観測しないことには答えは出ないなと翌日に破断面観測に入る事を決めた。

続く

『白馬雪崩の学び舎』

「白馬雪崩の学び舎」という勉強会を主宰しています。
11月26日21時半〜からFacebookページにてライブ配信を行います。
(アーカイブ残すので見てみてください)

----------ライブ配信内容----------

  1. 雪崩を分類し雪崩を知ろう
  2. 状況認識

について話をしようと思っています。
雪崩って知ってますか?雪崩を分類して雪崩を知らないと何を相手にしているかわからないため
予測をする事ができません。予測が出来ないと回避のしようがないためまずは雪崩を知ることから始めてみましょう。
状況認識は現場で情報を集める方法です。観測機が無かったらどうやって情報を集めますか?
そのヒントとなる状況認識のお話をしたいと思います。

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